甲状腺は頚部の真ん中あたりの皮膚のすぐ下にあり、食べ物に含まれるヨウ素を材料にして、甲状腺ホルモンを作って、血液中に分泌しています。
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甲状腺は頚部の真ん中あたりの皮膚のすぐ下にあり、食べ物に含まれるヨウ素を材料にして、甲状腺ホルモンを作って、血液中に分泌しています。
などがあります。つまり体を元気にするホルモンです。
甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても体調が悪くなってしまいます。甲状腺ホルモンが多すぎると「甲状腺機能亢進症」、少なすぎると「甲状腺機能低下症」といいます
甲状腺ホルモンの働きが過剰になる病気です。甲状腺ホルモンは体の元気をつくるホルモンですが、過剰になると前に記した症状があらわれます。いわば常に全力で走っているような状態です。
頻度の高い病気は以下のとおりです。
血液中にTSH受容体抗体(TRAb)という蛋白ができて、それが甲状腺を刺激することで、甲状腺ホルモンの分泌が増える病気です。
20~40歳代の女性に発症しやすく、強いストレスなどをきっかけに発症することがあります。TRAbがなぜ血液中に出現するかはわかっていません。また特徴的な症状として、まぶたの腫れや眼球が出てくるなどの眼の症状がでることが知られています。
過性に甲状腺の組織が壊れてしまう病気です。原因は不明ですが、一時的に動悸などを感じることはあります。ほとんど治療は不要で、2-3か月で改善します。たびたび繰り返すことがあります。出産後に発症することがあるため、産後はしばらく当院で経過観察させていただいております。
甲状腺の内部に炎症がおこり、痛みがでる病気です。頚部を圧迫されると強い痛みを感じます。微熱がでることもあります。血液検査と超音波検査で診断可能です。
ステロイドホルモンの内服でおおむね改善し、すこしずつ内服を減らし、内服を中止して痛みがでなければ完治です。まれに再発することがあります。
甲状腺の炎症がおこり、甲状腺内にリンパ球などが入り込んできて、組織の破壊がおこり、線維がために、甲状腺が腫れます。
甲状腺が腫れることを甲状腺腫といいます。
甲状腺に流れる血液の量が増加するため、甲状腺が全体的に腫れます。治療によって甲状腺ホルモンが下がってくると、腫れが改善することがあります。
甲状腺の中に慢性的な炎症がおこり、炎症による破壊と再生を繰り返すことで、甲状腺の細胞が減り、徐々に甲状腺ホルモンの分泌が低下します。
甲状腺内にしこりができる病気です。
甲状腺の細胞が増えたり、壊れたりしながら、しこりを形成する病気です。加齢や成長ホルモンでしこりが増えますが、原因はわかっていません。良性ですので、圧迫感などの強い症状がなければ、手術はせずに、数か月おきに超音波検査を受けていただき、経過観察いたします。
甲状腺の中に水分がたまった袋ができてしまう病気です。小さく、症状がない場合は経過観察いたします。のう胞が大きく、圧迫感を感じる、食べ物を飲み込んだ時に違和感がある場合は経皮的アルコール注入療法(PEIT)を当院にて行います。
日本で多いのは甲状腺乳頭癌という癌です。比較的成長が緩やかな癌です。そのため大きさによっては経過観察になることもあります。手術の場合は患者様と相談させていただき、手術可能な医療機関をご紹介いたします。
甲状腺内にリンパ球が腫瘤をつくる病気です。橋本病の方では発症する頻度がすこし上がるため、定期的な超音波検査をいたします。治療は化学療法(抗癌剤)や放射線治療になるため、治療可能な医療機関をご紹介いたします。
これらの腫瘤の診断を確定するために、当院では穿刺吸引細胞診という検査を行っております。患者様にベッドに横になっていただき、超音波で見ながら、細い針を刺して腫瘤から細胞をとってくる検査です。すぐに終わってしまうため、表面麻酔はしません。検査後は10分ほど首を圧迫していただき、血が止まったら帰宅となります。
経皮的アルコール注入療法(PEIT)も同様に行いますが、吸引細胞診よりは時間がかかります(10-15分程度)。
近年、不妊と甲状腺が関係していることがわかってきました。一部の不妊症の方では、甲状腺ホルモン剤の内服で、妊娠する可能性が高まることがわかっています。
妊娠中(とくに妊娠前半)は甲状腺ホルモンを調整することで、流産や早産のリスクを改善することができます。
当院では、近隣の産婦人科のクリニックの先生方と連携し、妊娠をお考えの方、妊娠中の方の甲状腺ホルモンのチェックに努めております。