橋本病
女性に多く、バセドウ病よりやや高い年齢層にみられる病気です。慢性的な炎症による破壊と再生を繰り返すことで、甲状腺の細胞が減り、徐々に甲状腺ホルモンの分泌が低下します。なぜ甲状腺に炎症がおこるのかはよくわかっていません。
甲状腺は腫れて大きくなることもありますが、病気がかなり進行すると、むしろ小さく固くなってしまいます。
上に示したように、うつ病や認知症、更年期障害、脂質異常症として治療されていることもあるので、疑わしい症状があれば、甲状腺ホルモンの検査を行った方がよいと思われます。
治療
橋本病の方の多くは、下に記した潜在性甲状腺機能低下症の状態も含めて、甲状腺ホルモンそのものは基準値内であり、この場合は治療が不要で、数か月おきに経過観察いたします。甲状腺ホルモンが低下していれば、甲状腺ホルモン剤の内服をしていただきます。橋本病はいまのところ、完治することはないため、内服は一生続ける必要があります。
また不妊症の場合は甲状腺ホルモンが基準値内であっても、妊娠、出産まで内服をしていただくことがあります。
甲状腺の腫れが大きくなり、圧迫感や飲み込みにくさを感じるようになるようであれば、手術も検討することはありますが、実際に手術になることは極めてまれです。
潜在性甲状腺機能低下症について
甲状腺ホルモンは基準値内なのに、TSHのみが高値である状態です。健診などで見つかることが多い病気です。甲状腺の働きが少し落ちてきて、脳の下垂体がTSHを多く分泌して、甲状腺に頑張れと信号を送っているような状態です。いわば甲状腺機能低下症の一歩手前のような状態です。橋本病の方によく見られます。この場合はTSHがあまりに高い状態が長期にわたって続くと、甲状腺が腫れてしまいますので、甲状腺ホルモンを内服していただき、TSHを抑える治療をすることがあります。
この病気は治療するかどうかの基準が甲状腺学会などでも大まかにしか決まっておらず、内服治療を始めるかどうかは主治医の判断に任されています。甲状腺ホルモンは量が多すぎると、心臓などに負担をかけることがあるので、患者様のご年齢や高血圧、高脂血症、糖尿病などの合併症の状態を考慮したうえで、治療するかどうかを決めていきます。